全科目:ゼロマークの登場(半々?)

現在のセンター試験は、選択肢が4~5程度あり、その中から1つを選ぶようになっています。つまり、正解が分からなければ、どれか1つを適当にマークすれば正解になる確率が四択なら25%と、それなりにありました。

共通テストのプレテストでは、「正しい選択肢をすべて選べ。正しいものがなければゼロをマークせよ」が登場しています。

知識の応用力を重視したマーク式では、ひとつの設問に正しい選択肢が複数あり、その全てを選ばなければ正答とならない新形式の出題があったが、苦戦した生徒も多かったようだ。

※産経新聞2017年12月5日朝刊「大学入学共通テスト試行調査 正答率1%切る設問も」

教育再生会議の委員だった陰山英男さんは『プレジデントファミリー』2019年4月号記事で次のように述べています。

「これまでは選択肢の中に必ず正解が一つありましたが、共通テストでは選択肢が増え、さらに選択肢の中に正解が複数ある問題も出されます。まぐれでは正解しづらくなり、より深い思考力が問われるのです」(陰山さん)

確かにその通りなのですが、一方、日本テスト学会は繁桝算男・理事長の名で「平成 29 年 11 月実施の大学入学共通テスト導入に向けた試行調査に関する日本テスト学会の意見」(2018年1月9日公表)の中で、この方式についても否定的な見解を示しています。

「適当なものをすべて選べ」という解答形式によって生じる変化は、正答率の低下です。

これは添付の【補足資料】に示されている通りです。関連して生じるもう 1 つの変化は、識別力の低下です。たとえば「5 つのうちから適当なものをすべて選べ」という設問は、上述のように 5 つの二者択一問題と同等であり、二者択一にすれば 5 問正答から 0 問正答までの細かい個人差を見ることができるものを、5 問正答のみを正答し、4 問以下の正答は 0 問正答と同じとみなすわけですから、貴重な個人差情報を捨ててしまうことになります。

また、テスト理論上のこととは別に、マークシート解答の読み取りにおいても、複数の選択肢を選ばせることはトラブルのもとになることが懸念されます。それは受験者がマークを消して付け直すことをした場合、消し方によっては、消したのかどうか判然としないことがあり、その判断が、1 つのみマークすることになっている場合に比べ、いくつでもマークしてよいことになっている場合にはより難しくなると考えられるからです。

このように、「適当なものをすべて選べ」という解答形式は、単に正答率を低下させ、識別力を低下させる機能しかなく、採点実務上のトラブルにつながる可能性もあるため、原則として使用しないことが望まれます。

こうした批判が強いこともあり、この形式の出題については確定しているわけではありません。